Kato-Katz、Koga寒天培地法、エーテル濃縮法、FLOTACの比較:Schistosoma mansoniおよび土壌寄生線虫の診断精度

Kato-Katz、Koga寒天培地法、エーテル濃縮法、FLOTACの比較:Schistosoma mansoniおよび土壌寄生線虫の診断精度



この研究はコートジボワールの小学生112名から採取した便を用いて、Kato-Katz、Koga寒天培地法、エーテル濃縮法、FLOTACの4つの糞便鏡検法を比較したものです。

全手法の総合結果をゴールドスタンダードとしたところ、S. mansoniの有病率は83.0%でした。

主要な発見は以下の通りです。

- FLOTACは保定液(SAF)で保存した便を30日または83日後に解析した場合、S. mansoniの感度が最も高く(91.4%)、エーテル濃縮法(85.0%)やトリプリケートKato-Katz(77.4%)を上回りました。

- FLOTACはフレッシュ便でも土壌伝播線虫(回虫、鞭虫、鉤虫)の検出感度が高かったが、得られる卵数(EPG)はKato-Katzより低く出る傾向があった。

- S. stercoralis(糸状虫)についてはKoga寒天培地法が最も有効で、FLOTACやKato-Katzでは検出できないことが多かった。

- 保存時間や使用する浮遊液(FS4: NaNO3、FS7: ZnSO4)、およびエーテル処理の有無が種ごとの検出感度や卵形状に大きく影響した。

特にエーテルは鉤虫卵を破壊する可能性が示唆されました。

結論として、FLOTACはS. mansoniおよび一般的な土壌伝播線虫の高感度診断法として有望だが、卵数の定量結果の解釈や保存条件・溶液選択の標準化が必要であり、S. stercoralisの診断にはKoga法が依然として推奨されます。



活用案

- 地域の寄生虫流行調査:SAF保存+FLOTACを用いて遠隔地試料を中央で解析し、高感度の有病率把握を行う。

- 駆虫プログラムの評価:治療前後の感染率評価でFLOTACを用い、従来法では見逃しやすい低強度感染を検出する。

- 臨床試験や薬効試験:より高感度な検査としてFLOTACを導入し、薬効の微妙な差を検出しやすくする(ただしEPG比較法の補正が必要)。

- ラボ標準化・トレーニング:FLOTACとKato-Katz、Koga法を組み合わせた診断パネルを作成し、診断能力を向上させる。

- 研究用途:保存条件や浮遊液の影響、卵形状変化のメカニズム解明にFLOTACを活用する。



よくある質問


Q: FLOTACとは何ですか?
A: FLOTACは便試料を浮遊液で処理して遠心分離後に浮上した寄生虫卵を観察する方法で、1回の検査で約1gの便を調べられるため理論的に高感度です。複数の浮遊液(FS)を使い分けられます。
Q: どの方法がどの寄生虫に最適ですか?
A: S. mansoni:保存した便をFLOTAC(特にFS7)で30日程度後に解析するのが最も感度が高い。S. stercoralis:Koga寒天培地法が最良。鉤虫・回虫・鞭虫:FLOTAC(フレッシュ試料でFS4が良い)が高感度。
Q: FLOTACの問題点は何ですか?
A: 主な課題は(1)得られる卵数(EPG)がKato-Katzより低めに出ること、(2)保存時間や浮遊液・前処理(エーテル)の影響で結果が変わること、(3)S. stercoralisの検出には不向きな点です。標準化が不足しているため、結果解釈には注意が必要です。
Q: 保存は必要ですか?どのような影響がありますか?
A: S. mansoniはSAF保存後にFLOTACで高感度となるが、鉤虫はSAF保存とエーテル処理で卵が損傷されやすく感度や卵数が低下する傾向があるため、保存方法と解析タイミングは種によって最適条件が異なります。
Q: FLOTACはKato-Katzに完全に置き換えられますか?
A: 現時点では一概に置き換えられるとは言えません。FLOTACは高感度で特に保存検体を扱える利点がありますが、卵数の差や標準化の問題、S. stercoralisへの弱さがあるため、用途に応じてKato-KatzやKoga法と組み合わせて使うのが現実的です。



未来予測

- FLOTACの標準化(保存時間・浮遊液の選択・前処理プロトコル)が進めば、S. mansoniや複数の土壌伝播線虫の監視・介入評価で重要なツールになる可能性が高いです。

- 中央ラボでの集中解析とSAF保存を併用することで、遠隔地からの試料輸送と大規模サーベイの効率化が期待されます。

- 卵数データの補正法や種別ごとの最適プロトコルが確立すれば、駆虫薬の有効性評価や根絶プログラムにおけるモニタリング精度が向上します。

- 一方、S. stercoralisの検出には依然として培地法やBaermann法が必要であり、FLOTACは補完的役割に留まる見込みです。



元論文はこちら: https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pntd.0000754



← 前の記事を読む

コメント